人との出会いが導いた社長としての原点
どんな幼少期・学生時代を過ごしたか教えてください
── 出身地はどちらですか?出身地に関するエピソードや幼少期の想い出を教えてください
熊本生まれですが、実は転勤族の家庭で、小学校だけでも3つの学校を転々としていました。
中学進学のタイミングでようやく熊本に戻り、家を建てて落ち着いたんですが、転校が多かったので「どうやって友達を作ろうか」と常に考えていた記憶があります。
新しい環境に入るときって誰でも不安になると思うんですが、ソフトボールチームに入ったり、まずは自分から動くことを意識していました。
その中でもコミュニケーションの第一歩である挨拶という部分は特に大切にしています。
学生時代について詳しくお聞かせください
── 学生時代の想い出や就職活動のエピソードを教えてください。
中学から本格的に野球に打ち込んでいました。部活は厳しくて、先輩後輩の礼儀や理不尽さにも触れましたが、それが今思えば人間力を高める経験だったと思います。
高校時代、部活中のケガで2ヶ月の入院生活を経験し、野球を断念せざるを得なかったのですが、逆に「じゃあ自分はこれから何を目指すんだ?」と深く考えるきっかけになりました。
その後、専門学校に進学し、将来は公務員も視野に入れていましたが、今の会社の代表であった内田氏(現相談役)との出会いが人生を変えました。「やる気があるなら来てみたら?」と声をかけてもらい、久留米店に配属。その後も何度か転勤しながら、かつて住んでいた地域に戻るなど、人との縁を強く感じるキャリアになりました。
社長になるまでのきっかけやキャリアについて伺います
── 会社を立ち上げることに対して、準備など取り組んだことを教えてください
正直、最初は「社長になろう」なんて気持ちは一切ありませんでした。責任の重さに躊躇して、最初はお断りしたくらいです。
でも、「やるからにはやりきる」という思いで、腹をくくったんです。
自己啓発セミナーに参加した経験もあったことで、異業種の方々と交流し、多様な考え方に触れていたのも大きかったです。
ビジネス書を読んだり、自己啓発に時間をかけたり、学ぶ姿勢を大切にするようになりました。
社員が160人いれば、その家族も含めて600人以上の人生を背負っている。
だからこそ、自分ひとりで背負い込むのではなく、「できない部分は周りに頼る」「得意なことは自分が率先する」というチーム経営を大切にしています。
いろんな人と出会い、いろんな経験を積んできた自分だからこそ、人の力を信じてここまで来られたと思っています。
人の想いをつなぎ次の100年へ
企業名に込めた想い・由来を教えてください
ユーケイデンタルは株式会社内田サンエス歯科商会と株式会社ケイダが対等合併し、その頭文字をとって「ユーケイ」デンタルとして新たな一歩を踏み出しました。
事業を始めるきっかけについて教えてください
── 継承時に「変えたくないこと」と「新たに取り組みたかったこと」は何ですか?
創業106年という長い歴史のある事業を継承するにあたり、まず強く感じたのは、「守るべきこと」と「変えるべきこと」をしっかり見極めることの大切さでした。
歯科業界は今、時代の変化が非常に激しい業界になっており、新しい材料や技術も次々に登場し、多様なニーズに応える柔軟さが求められます。
しかし、先代たちが築き上げてきた理念や、患者さん・お客様を大切にする姿勢は、決して軽視してはいけないものです。
だからこそ私は、「変化を恐れず挑戦すること」と「人とのつながりを何より大切にすること」を両立させたいと考えています。
新しい風を歓迎しつつも、「初任給をもらったら両親にプレゼントを贈る」というような両親に感謝する心を忘れない。
そんな文化を、これからも引き継いでいきたいと思っています。
事業に込めた想いについて教えてください
── この事業を通じて、どのような想いを世の中に届けたいと考えていますか?
歯科業界が果たすべき役割は、これからますます重要になっていくと感じています。
単に虫歯を治すだけではなく、「自分の歯で食べられる」ことを守るのが私たちの使命です。
例えば、しっかり噛むことで認知症のリスクが下がる、糖尿病の予防にもつながるといった研究結果も増えており、口腔ケアは健康寿命を延ばす鍵なんです。
特に訪問歯科は、高齢者や障がいのある方々が自分らしく生きるための支援でもあります。「歯科から健康を支えることで、地域社会にも貢献できる」そんなプライドと責任感をもって、事業に取り組んでいます。誰かの「当たり前の暮らし」を支える存在でありたい。そんな想いを、社員一人ひとりにも伝えていきたいと思っています。

社員に背中を見せる存在ではなく、横に立つ存在へ
趣味・特技について伺います
── 趣味や特技が仕事に活かされているなと感じたことはありますか?
趣味はゴルフやカラオケ、そしてお酒を交えたコミュニケーションですね。よく「誰とでもすぐ仲良くなれるよね」と言われます。飲みに行けば、となりの常連さんとも自然と打ち解けていることも多いです。
年齢も立場も関係なく、相手の背景に興味を持って話を聞いていると、不思議と距離が縮まるんです。これは仕事にも大いに活かされています。社員との距離感や、取引先との信頼関係づくりなど、すべて“人とどう向き合うか”が基盤になりますから。経営というと堅苦しい印象があるかもしれませんが、私にとっては「どれだけ人と丁寧に接するか」が何より大切。趣味がそのまま“人を大切にする姿勢”という意識へと反映されているのかもしれません。
経営者としての「自分らしさ」についてお聞かせください 
── ご自身の強みや個性について、どのように捉えていますか?また、その強みを活かして、どのように事業や経営に反映させていますか?
自分の強みは、何気ない会話を大切にできるところだと思っています。年齢や役職に関係なく、分け隔てなく接する。特別な言葉を使わなくても、日々のちょっとしたコミュニケーションで信頼関係は築けると信じています。
経営者としてはまだまだ挑戦の途中ですが、人と会って話すことに全力で向き合う姿勢だけはずっと変わらないですね。時代の変化に合わせて新しいチャレンジを続ける中でも、温度感のある対話を大切にしたい。それがあるからこそ、社員も「変わっていく会社」に安心してついてきてくれると思うんです。会社は“人”でできている。だから、会社の雰囲気や空気は、日々の会話でつくられていくと実感しています。
ご自身の経営者としての強みを活かした具体的な取り組みについて伺います
── 特にこだわっている商品やサービス、または社内の文化などがあれば教えてください
取り組みの一つが「社長塾」です。これは、新卒社員~管理職を含めた社員が参加する機会を設け、自分の考えや経営の軸を言葉で伝える取り組みです。
特に大切にしているのは、「お客様第一主義」とは何か?といった問いに対する、自分なりの解釈を共有すること。ただ理念を掲げるだけではなく、社員一人ひとりに“腹落ち”してもらいたいという想いから始めました。このような対話を通して、会社の文化や想いが自然と伝わっていくんです。
どんなサービスを提供するにも、根っこにある価値観がブレてはいけない。そう確信しているからこそ、経営者自らが“伝える姿勢”を持つことに強くこだわっています。
変化に挑み、100年先を見据える歯科医療
これから先の会社としての成長について伺います
── いま、会社を経営するにあたって難しいと感じている課題など「壁」はありますか?また、会社の規模・成長率について、どのように会社を大きくしていきたいですか
今、経営していて一番難しいと感じるのは「時代の変化にどう対応するか」です。歯科業界は、医療制度や政策の影響を大きく受ける分野です。その都度、新しいルールや制度に迅速に対応する必要がありますし、情報量も膨大です。自分ひとりの判断で動けない部分も多く、常にアンテナを張っておくことが求められます。
また、人件費の高騰や働き方改革も無視できません。私たちは今、残業の削減やワークライフバランスの見直しにも取り組んでいます。数字の目標としては「売上106億円」を掲げていますが、それは単なる数字ではなく、社員が健やかに働ける環境を整えた上での達成を目指しています。成長とは、バランスの中にあると考えています。
これから先に取り組みたい社会貢献・社会課題解決の取り組みについて伺います
── 事業を通じてこれから先どのように貢献・社会課題に向き合っていきたいとお考えか教えてください
これからの社会において、歯科医療が果たすべき役割はさらに広がっていくと考えています。治療にとどまらず、予防や健康維持の分野で地域を支える存在へと進化していくべきだと。特に注目しているのが「訪問歯科」です。高齢化が進む今、通院が難しい方々にとって、自宅や施設で診療が受けられる仕組みは非常に重要です。歯科は「口からの健康」を支える最前線。私たちの事業が、社会課題の解決につながっていくとしたら、これほど誇らしいことはありません。目指すのは、誰もが“最後まで自分の口で食べられる社会”をつくることです。
経営の信念と事業の展望について伺います
── 経営者として「経営をする上でこれは絶対に譲れない」と思う信念や価値観はありますか?また、その信念を事業運営にどう反映させていますか?
私が経営する上で最も大切にしているのは、「歴史を受け継ぐ」という責任です。売上や規模を追いかけることよりも、しっかりと土台を築いて、次の世代にこの会社を渡していきたい。
創業から106年という年月を無駄にせず、会社を“続ける”ということにこそ、価値があると思っています。事業を急拡大させるよりも、正しい基盤を整えること。それが、社員にも安心して働いてもらえる環境づくりにつながります。会社を存続させ、未来へとバトンをつなぐために、今やるべきことを一つずつ確実にやる。そんな堅実な経営が、最終的には最も強い会社をつくると信じています。

ゼロからの挑戦を応援する、あなたの成長の場
このインタビューを読んでいただいた学生さんへのメッセージをお願いします
学生のみなさんに伝えたいのは、「学歴や経験ではなく、やる気と姿勢が大切」ということです。社会に出れば、誰もがゼロからのスタートです。
そこから自分でどれだけ学び、吸収し、動けるか。自分からセミナーに参加したり、本を読んだり、先輩に質問したり。そうした一つ一つの行動が、将来の自分をつくります。
歯科の知識がなくても大丈夫。むしろ、知らないからこそ興味を持って飛び込んでくる姿勢が大切です。
私たちが求めているのは、「挨拶などの基本を大事にできて、人に対して誠実でいられる人」。一緒に働く仲間として、そんなあなたに出会えるのを楽しみにしています。
