「学生時代のやってみたいが、今の経営の原点に。」
どんな幼少期・学生時代を過ごしたか教えてください
── 出身地はどちらですか?ご家族はどんな方々でしたか?幼少期の想い出を教えてください
私は東京都調布市の出身で、生まれてからずっとこの地で育ってきました。代々続く家系で、祖先は江戸時代からこの地域で「機械油」を製造・販売していたそうです。そのため、地元では昔から“油屋の清水さん”と親しまれてきました。私自身が三代目として継いだ月兎ソースも、そんな家系の延長にある事業です。
実家は会社の敷地の隣にあり、幼少期から祖父や父が働く様子を間近で見て育ちました。日常的に親戚や近所の方、取引先やお客様が頻繁に出入りする、まさに「商いの家」でしたね。常に人の気配がある環境の中で、自然と“仕事とは何か”を肌で感じながら過ごしていた気がします。
三人きょうだいの長男だったこともあり、何をしても割と許される立場で(笑)、のびのび育ててもらいました。その一方で、「いずれ家業を継ぐのだろうな」という空気も常にあり、良い意味で期待をかけられていることは意識していました。直接プレッシャーをかけられたことはありませんが、父の背中を見て「自分もいつかこのバトンを受け取るんだろうな」と思っていたのを覚えています。
学生時代について詳しくお聞かせください
── 学生時代はどのように過ごしていましたか?学生時代の想い出を教えてください
学生時代は、いろんなことに広くチャレンジしてきました。小学校ではラグビー、中学で野球、高校ではテニスとゴルフ、大学ではサークル活動を自ら立ち上げるなど、常に新しいことに挑戦し続けるタイプだったと思います。
特に何か一つに打ち込むというよりは、「どんな世界にも触れてみたい」という好奇心が強かったですね。自分には一つの道を極めるよりも、多様な視点を持つこと”の方が合っていると、学生の頃から感じていました。
アルバイトも飲食業ばかりで、百貨店内のレストランや宅配弁当屋など、厨房での盛り付けや配達などを経験しました。時給が高かったという現実的な理由もありましたが(笑)、気づけば食に関わる仕事ばかりを選んでいました。
というのも、実は私の母は醤油屋の娘、父はソース屋という調味料一家の出身で、生まれたときから食や外食に囲まれた環境だったんです。バイトも含めて、自分がいつの間にか「外食に関わる人間として生きている」と感じるようになっていました。
その中で、「どうしてもここで働きたい」と思ったのが、当時業務用食材業界ナンバーワンだった味の素でした。取引先としてのご縁もあった企業でしたが、自分でもしっかり研究し、勉強を重ねて、入社にいたりました。
社長になるまでのきっかけやキャリアについて伺います
── 会社を任されることになった背景や、その時の気持ちを教えてください。また、事業を任されることになってから、ご自身が取り組んだことはありますか?
味の素で6年間働いたのち、家業に戻ってきたのが月兎ソースでのスタートでした。最初は専務取締役として入りましたが、戻ってすぐに感じたのは「この会社には、まだ整えるべきことがたくさんある」ということでした。
当時の社内は非常に年齢層が高く、仕組みや教育制度も整っておらず、業務フローも属人化している状況でした。私はまず、会社全体の“土台作り”から始めました。倉庫や事務所の整理整頓から着手し、社内の清掃・在庫管理体制の再構築に取り組みました。
その後、自ら配送ドライバーとして現場に出たり、営業として2,000件以上の飛び込み訪問をしたり、必要なことはすべて自分の足で経験してきました。社内の全部署に順番に入り込み、それぞれの体制を見直して構築し直していく── そんな泥臭いプロセスの中で、事業の実態と課題、そして未来の可能性を一つずつ掴んできた感覚があります。
世界一の食文化を、裏側から支える誇りを一緒に。
企業名に込めた想い・由来を教えてください
変化を恐れず挑戦し、兎の如く飛躍して、共に食の未来を照らしましょう!という意味が込められています。
事業を始めるきっかけについて教えてください
── 継承時に「変えたくないこと」と「新たに取り組みたかったこと」は何ですか?
私が家業に戻ってきた当時は、製造と卸の事業がちょうど半々の比率でした。創業当初から手掛けていたソース製造は、家庭の食卓での需要が徐々に減少しており、市場の縮小が進んでいました。
一方で、業務用食材のニーズは拡大傾向にあり、これからの時代に求められる領域だと感じ、事業の主軸をそちらへと移す決断をしました。これは単なるシェアの変化ではなく、「食のインフラ」として飲食店を支え続けるという使命感からの判断でした。
ただし、「お客様のために何ができるか」という創業当初からの想いは今も変わらず、たとえば当日配送の継続や、仕込みの代行など、お客様目線のサービス提供はそのまま継承し続けています。
事業に込めた想いについて教えてください
── この事業を通じて、どのような想いを世の中に届けたいと考えていますか?
日本の飲食店は、ミシュランの星の数でも世界一を誇るほどのレベルの高さを持っています。そんな日本の「食」は、まさに世界に誇る文化だと私は信じています。
私たちはその文化を支える立場として、料理人の方々が最高のパフォーマンスを発揮できるよう、食材や情報の提供を通じて下支えしていく。それが当社の役割であり、責任でもあると考えています。
自分たちが関わったことで飲食店の来客数が伸びたり、笑顔が増えたりしたとき、ようやく自分たちの仕事が世の中に貢献できたと実感します。その積み重ねこそが、日本の食文化の未来に繋がると信じて、日々取り組んでいます。

年間200件を超える食べ歩き──好奇心が仕事のアイデアに変わる。
趣味・特技について伺います
── 趣味や特技に関してのエピソードがあれば教えてください。趣味や特技が仕事に活かされているなと感じたことはありますか?
私の趣味は食べ歩きです。B級グルメからミシュラン星付きのレストランまで、ジャンルや価格帯にこだわらず、年間200件以上を訪れています。
流行や話題のお店だけでなく、昔ながらの老舗や個性ある店舗にも足を運び、「この味はなぜ人気なのか」「どんな工夫がされているのか」と、常にアンテナを張りながら食のインスピレーションを得ています。
この習慣は仕事にも直結しており、実際に仕入れ提案や商品開発のヒントになることも多いです。加えて、自宅では新商品の調味料を使った料理づくりも楽しんでいます。料理の腕前はプロには及ばないかもしれませんが、食に対する好奇心と愛情は誰にも負けないと思っています。
経営者としての「自分らしさ」についてお聞かせください
── ご自身の強みや個性について、どのように捉えていますか?また、その強みを活かして、どのように事業や経営に反映させていますか?
自分の強みは、なんでもそこそこではなくきちんとできる「幅の広さ」と、「美的感覚」だと思っています。
私は昔からファッションや建物の内装、配色バランスなど、見た目の美しさや細部へのこだわりに惹かれるタイプで、そうした感性が自然と事業や経営の中にも活かされています。
商品一つとっても、見た目・設計・提案資料に至るまで「どう見えるか」「どんな印象を与えるか」に気を配りますし、全体の空気感やブランドイメージを統一することで、会社としての信頼感にも繋がると考えています。
また、好奇心を原動力に新しい挑戦を恐れず、「まずやってみる」姿勢を大事にしています。
ご自身の経営者としての強みを活かした具体的な取り組みについて伺います
── 「これは自分だからこそできた」と思える取り組みや成果はありますか?また、特にこだわっている商品やサービス、または社内の文化などがあれば教えてください
私だからこそ実現できたことのひとつは、「食」に関する一貫性を活かした事業の幅広い展開です。
幼い頃から両親ともに食品関係に携わり、自身も味の素での勤務経験を持つ中で、外食の現場に対する理解と愛着が自然と養われてきました。
その経験を活かし、卸売に留まらず、自社製造部門の立ち上げや、一般消費者向けのWeb通販事業にもチャレンジしてきました。また近年ではM&Aによって事業規模を拡大し、売上も4年間で約2倍にまで成長しています。
社内文化としては、「実直さ」と「誠実さ」を大切に、社員同士が気持ちよく働ける環境づくりにも注力しています。
「食材と情報が揃う、飲食店の一番の相談相手へ。」
これから先の会社としての成長について伺います
── いま、会社を経営するにあたって難しいと感じている課題など「壁」はありますか?また、会社の規模・成長率について、どのように会社を大きくしていきたいですか
事業が急成長する中で、組織としての一番の課題は「人材」です。次々と新しい展開が進む一方で、その成長スピードに人材の育成や確保がまだ十分に追いついていないのが現状です。
今後は、既存事業を安定的に運営しながら、新規事業にも柔軟に取り組める次世代の中核メンバーを増やしていく必要があります。
また、当社が目指しているのは、単なる業務用食材の卸売業者ではありません。将来的には「日本一、飲食店が必要とする食材と情報が揃っている会社」になることを目標としています。
仕入れ先のネットワークや自社製造、さらにはメニュー提案や販促ノウハウなども含めて、飲食店にとって“困ったときは月兎ソースに相談すれば何とかなる”と思ってもらえるような、圧倒的な存在価値を築いていきたいと考えています。
これから先に取り組みたい社会貢献・社会課題解決の取り組みについて伺います
── 事業を通じてこれから先どのように貢献・社会課題に向き合っていきたいとお考えか教えてください
当社では「フードロス削減」を大きなテーマとして掲げ、持続可能な社会の実現に貢献していきたいと考えています。
そのためにまず取り組んでいるのが、在庫管理のDX化です。デジタル技術を活用して在庫水準を適正に保ち、無駄な仕入れや廃棄を最小限に抑える体制づくりを進めています。
さらに、余剰となった食材も可能な限り有効活用できるよう、「食材の使い道を増やす」提案にも力を入れています。たとえば、規格外品や予定外の在庫については、子ども食堂への寄贈や、代替用途のレシピ開発を行い、無駄にしない流通の仕組みを築いています。
「食」の価値を最大限に活かし、社会に還元していく。そんな循環型のビジネスモデルを今後も追求していきたいと思っています。
経営の信念と事業の展望について伺います
── 経営者として「経営をする上でこれは絶対に譲れない」と思う信念や価値観はありますか?その信念を事業運営にどう反映させていますか?また、事業の展望について、これから先の事業をどのように拡大・運営していきたいか教えてください
経営者として譲れない信念は、「お客様からの期待を、必ず超える形で返すこと」です。
どんなに難しい依頼や課題であっても、「ノー」と言わず、あらゆる手段を使って最善の答えを探し出す。それが私たちのスタンスであり、信頼の礎です。
今後の展望としては、既存の業務用食材の卸に加え、メニュー提案や情報提供などを含む“トータルサポート企業”へと進化していきたいと考えています。
「飲食店が必要とするものはすべて、ここに揃っている」── そんな存在になることが私たちの理想です。
食材はもちろん、販促のヒントや業態別の成功事例、トレンド情報や調理機器の紹介に至るまで、飲食店経営に関わるあらゆるニーズに応えられる企業を目指し、これからも挑戦を続けていきます。

人柄と想いが社風をつくる──だからこそ、一緒に働く仲間を大切に。
このインタビューを読んでいただいた学生さんへのメッセージをお願いします
当社では、依頼されたことに対して120%で応えるような、熱量の高いメンバーが多く活躍しています。言われたことだけで満足せず、「もっと良くできることはないか?」と常に探究心を持ち、ベストを尽くす姿勢が、信頼や結果に直結していると感じています。
一緒に働きたいのは、「これでいいや」ではなく、「もっといいモノがあるはず」と考えられる人。そして何より、食べることが好きな人ですね。私は食べ歩きが趣味なのですが、ぜひ一緒に手探りでいろんな飲食店を訪れながら、学びを深めていきたいです。
当社では、営業・販売から、商品企画・物流まで一気通貫で携わることができます。そのため、手がけた仕事の成果がダイレクトに見えやすく、「自分が関わったからこそ」の実感が得られる環境です。大企業ではなかなか味わえない決裁権の広さや仕事の幅も、中小企業ならではの魅力だと思います。
最後に、会社選びに迷ったときは「業界」よりも「人」で選んでみてください。代表や社員の人柄、想いが社風に直結している会社こそ、きっとあなたに合った居場所になるはずです。ご縁があれば、ぜひ一緒に食の未来をつくっていきましょう。
